過去の調査では、子どもの30.7%が口唇閉鎖不全に該当
子どもの口唇閉鎖不全は、日常的に唇が開いた状態になってしまうため、口腔乾燥を引き起こします。さらに、口腔乾燥は、う蝕や歯肉炎を引き起こし、口腔内環境を悪化させるといわれています。
また、口唇閉鎖力が弱いと、歯を取り囲んでいる口唇や頬、舌の力のバランスが崩れてしまい、上顎前歯の唇側傾斜や上顎歯列弓の狭窄に繋がり、このことが、歯列不正の原因となることが少なくありません。
さらに、アレルギー疾患を誘発することや姿勢が悪くなる、集中力が低下するなどの弊害も報告されています。
日本人の子ども対象として、口唇閉鎖不全の有病率を調査した過去の研究では、3〜12歳までの子ども30.7%が口唇閉鎖不全に該当したそうです。また、その有病率は年齢とともに増加することや、自然に改善することが期待しにくい習癖であることが明らかになりました。
このことから、口唇閉鎖不全は積極的に対応するべき歯科疾患であるといえるでしょう。
口唇閉鎖不全に対しては、鼻づまりや極端な歯列不正の異常がある場合を除き、口唇閉鎖力を強化させるための体操を優先して行いますが、子どもに対する体操の効果やその有効性については明確にされていないのが現状でした。
しかし、最近の検証により、口唇ならびに顔面周囲筋のトレーニングは子どもの口唇閉鎖不全を解消することが明らかになりました。
これまで歯科領域では、う蝕治療のような疾患修復に重点が置かれていました。
しかし近年は、口腔機能を獲得し、維持、回復することが重要視されるようになったといえます。
子どもに対する口腔機能の訓練は、将来起こり得る口腔機能の発達不全を未然に防ぐためにも必要なアプローチだと考えます。
清原